人間の脳って、100%埋めてないと安心できない?もしくは100%埋めたいって心理あるのかな?って疑問が湧いたんだけど
人間の脳に「100%埋めたい・埋めてないと不安」というような心理があるかというと、脳そのものがそう求めているというより、私たちの“心”や“認知の傾向”がそう感じることがある、というのが正確のようです。
1. 「認知の空白を埋めたがる性質」
人間は、物語や出来事、情報の「欠けている部分」があると、不快になり、それを埋めたくなります。これは心理学で「認知的不協和」や「ゲシュタルトの法則」とも関係します。
→ たとえば、
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説明されていないことに対して「なぜ?」「どうして?」と考えてしまう。
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映画の伏線が回収されないとモヤモヤする。
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曖昧な情報に対して、最悪のシナリオを勝手に想像してしまう。
これは脳が「未知を嫌い、既知に変えたい」という本能的な傾向を持っているから。
2. 「コントロール欲求」
人は予測不能なものを不安に感じます。空白があると、そこに何が起こるかわからない=自分ではコントロールできないと感じるため、埋めて安心したくなるのです。
→ 特に不安が強い人、HSP(繊細な人)、ASD傾向のある人にはこの傾向が強く出やすいです。
3. 「安心のための仮想的100%」
実際には100%埋まることはほとんどないのですが、「すべて理解してる」「すべて決まっている」という感覚は、安心感を生むため、脳がそれを“望んでいる”ように感じることがあります。
つまり、脳自体が「100%埋めないと不安」というより、私たちの“認知のしくみ”が、空白・未完・曖昧さを不安と感じ、それを埋めようとする傾向があるということです。
脳が「未知を嫌い、既知に変えたい」という本能的な傾向を持っている、とは?
1. 進化的な背景:脳は「生き残るための予測マシン」
人間の脳は、何よりもまず「生存のため」に進化してきました。
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知らない音がする → 捕食者かもしれない
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未知の場所に行く → 危険が潜んでいるかもしれない
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知らない食べ物 → 毒かもしれない
→ 未知=危険という前提で動いていたほうが、生き延びやすかったのです。
この結果、脳は「未知なものに対して警戒する」ようにできています。そして、未知を「既知に変換」することで、安心しようとするのです。
2. 脳は常に「予測」している
最新の脳科学では、脳は外界をそのまま受け取るのではなく、常に予測して補完しているということがわかっています。これは「予測処理理論(predictive processing)」と呼ばれる理論で、次のように考えられています:
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脳は「次に起こること」を常に予測している
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現実と予測が一致すれば安心する
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予測と現実にズレがあると、「エラー」として不快・ストレスが生じる
→ 脳はこの「ズレ」をできるだけ減らそうとします(=未知を既知に変えようとする)。
3. 脳にとって「不確実性」はコストが高い
予測できないことがあると、脳はそれに対して注意を向け、エネルギーを使って対処しようとします。
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「この後どうなるのか分からない」
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「この人は何を考えているのか分からない」
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「これは安全なのか、危険なのか判断できない」
→ このような不確実な状況は、脳にとって非常にエネルギー消費が大きく、ストレスを感じる原因となります。
だからこそ、人間はできるだけ世界を理解し、整理し、ラベリングして、「分かったつもり」になることで安心しようとするのです。
4. 例:空白が不安になる具体例
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推理ドラマで犯人が最後まで明かされないと、気持ち悪い
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会話の途中で相手の表情が曖昧だと、「怒ってるのかな?」と不安になる
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子どもが「なんで?なんで?」と聞くのも、未知を減らして安心したいから
まとめ:脳は「未知を嫌い、既知を好む」理由
理由 | 内容 |
---|---|
生存のため | 未知=危険、既知=安全と判断する傾向がある |
予測脳だから | 脳は常に「未来を予測」しようとする |
認知の省エネのため | 予測できると処理が早くなり、エネルギー消費が少ない |
不安軽減のため | 「分かる・理解している」ことで安心できる |
「不安が強い人はなぜ曖昧さに弱いのか」や「安心感を得るにはどうすればいいか」
前提として:「不安」と「曖昧さ」は親密な関係にある
不安とは本質的に、
「未来がどうなるか分からない状態」=“曖昧さ”
から生まれます。
だから不安が強い人は、曖昧さを避けようとしたり、早く「白黒はっきりさせたい」と感じやすいのです。
①「不安が強い人はなぜ曖昧さに弱いのか?」
主に以下の理由が考えられます。
1. ■ 脳の“予測機能”がフル稼働するから
不安が強い人の脳は、**「未来を予測しようとする力が強い」**傾向にあります。
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曖昧な状況=予測不能=危険かもしれない
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だから「最悪のケース」を想定してしまう
脳にとっては「何が起こるか分からない」という状況が一番怖いので、
→ たとえ悪い想像でも、「確定している方がまだ安心」だと感じてしまうのです。
2. ■ 過去の経験と結びついている場合も
過去に「曖昧だったせいで傷ついた」経験があると、曖昧な状態がトラウマ的に感じられます。
たとえば:
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親や先生が機嫌が読めず、安心できなかった
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明確な理由もなく否定・拒絶された
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はっきりしない人間関係に苦しんだ
このような体験が、「曖昧=危険」という学習を脳に植え付けてしまうのです。
3. ■ コントロールできないことに強い不安を感じるから
不安が強い人は、「見通しが立つこと」「自分の手で調整できること」に安心を感じやすいです。
曖昧な状態は、自分の力ではどうにもならない感じがして、無力感や不安感が増してしまうのです。
②「どうすれば安心感を得られるか?」
曖昧な状況でも自分を落ち着かせたり、安心感を育む方法はあります。
以下に具体的なアプローチを紹介します。
1. ■ 「曖昧なままでも大丈夫」を体験で覚える
すぐに白黒つけなくても「何も悪いことは起こらなかった」経験を増やすことがカギです。
例:
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相手の返信が遅くても、自分を責めなかった
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会議で「答えが出なかったけど進めた」
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「決めないまま保留する」ことができた
このように、**「曖昧さの中にいながらも安全だった」**という記憶を重ねていくと、脳の警戒レベルが下がっていきます。
2. ■ 「自分で安心を作るルーティン」を持つ
外の状況が曖昧でも、「内側の安心」があれば揺らぎにくくなります。
例:
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朝起きたらお茶をゆっくり飲む
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布団の中で「今日もよくやった」と言って眠る
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深呼吸を3回して「大丈夫」とつぶやく
小さくてもいいので、「決まった安心」を1つでも持つことが、不確かさに飲まれない軸になります。
3. ■ 曖昧さを“敵”ではなく“余白”として捉える
曖昧な時間=「まだ答えが来ていないだけの時間」と考えてみましょう。
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芽が出る前のタネ
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焼き上がる前のパン
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雲の向こうにある太陽
→ “まだ見えていないだけ”という視点を持つと、不安は少しだけ和らぎます。
4. ■ ネガティブ・ケイパビリティを鍛える(前回の内容)
「わからないまま、ここにいてもいい」と思える力を日々少しずつ育てていく。
→ 不安は「消す」のではなく「共にいられるようになる」と自然に薄れていきます。
5. ■ 信頼できる人との“共同安心”を持つ
誰かに話すだけで、曖昧な状況も「共に耐えるもの」に変わります。
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「不安なんだよね」と言える関係
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「まだ決まらなくていいよ」と言ってくれる人
→ ひとりで曖昧さに耐えるのではなく、“つながり”が安心感を生むのです。
🌿まとめ
不安が強い人が曖昧さに弱い理由 | 安心感を得る方法 |
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予測不能が苦手 | 「わからないままで安全だった経験」を増やす |
過去の体験が影響している | 自分でできる安心ルーティンを持つ |
コントロールできないと不安 | 曖昧=余白、未完=可能性と捉える |
正解を早く求めすぎる | ネガティブ・ケイパビリティを育てる |