いじめや性被害などの被害者になったとき、寄り添ってくれた人はいましたか?誰にも言わずに抱え込みましたか?さらにひどい言葉を浴びせられましたか?
今回は「あなたにも非があった」「被害者にも隙があった」という言葉を使う人の心理的傾向を三つ紹介します。
1. 自己防衛としての他者批判
この言葉を使う人の中には、「自分は被害者にならない」という幻想を保つために、被害者の落ち度を探して安心しようとする傾向があります。
これは「公正世界仮説(Just-World Hypothesis)」と呼ばれる心理効果で、「世の中は公正だから、悪いことが起きた人にも原因があるはず」と無意識に考えるものです。
2. 自己責任思考の強さ
自分が被害者になったときには、「自分が悪かったのかもしれない」と反省しすぎるタイプもいます。
これは日本社会に根強い「自己責任」の価値観が影響していることが多いです。しかし、その反面で、他人に対しても同じ厳しさを向けることがあり、「被害者にも隙があった」と発言するようになります。
3. 逆に、自分を正当化するタイプ
一方で、自分が被害者になったときに「自分は悪くない、100%相手が悪い」と考えるタイプの人もいます。こうした人は、他人に対しては厳しいが、自分には甘いというダブルスタンダードを持っていることがあります。このような人にとって、「被害者にも隙があった」は、他者だけに当てはまる言葉です。
どちらのタイプにしても、「被害者にも非がある」という発言は、加害者を免責する危険があるため、安易に使うべきではない言葉です。学校でも社会でも加害者擁護が垣間見られることがあります。この言葉により被害者が自分を責めトラウマにつながる可能性があります。
じゃあ、どんな言葉をかけたらいいでしょうか?相談されて言葉を失うこともあるでしょう。寄り添う言葉を挙げてみました。
◆ いじめの場合
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「あなたは何も悪くないよ。」
→ 加害者と被害者の区別をはっきりさせ、安心感を与えます。 -
「つらかったよね、今までよく頑張ったね。」
→ 被害を受けてきた努力や我慢を労う言葉です。 -
「話してくれてありがとう。一緒に考えようね。」
→ 孤立感を和らげ、「味方がいる」と思わせる言葉。 -
「あなたがどんなふうに感じてるか、ちゃんと聞きたい。」
→ 感情を肯定し、安心して話せる空気をつくります。
◆ 性被害の場合
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「あなたのせいじゃないよ。悪いのは相手だけ。」
→ 自責の念を取り除く強力な言葉です。 -
「あなたの感じた恐怖や不安は、本当に大切な気持ちだよ。」
→ 被害者の感情を正当なものとして受け止めます。 -
「無理に話さなくても大丈夫。あなたのペースでいいからね。」
→ コントロールを取り戻せる感覚を与える一言。 -
「あなたは今、ここにいるだけで充分すごい。守りたいと思ってる人がちゃんといるよ。」
→ 存在そのものを認め、愛される価値を伝える言葉です。
どんな被害であれ、「あなたが悪い」という言葉の影は、心に深く傷を残します。だからこそ、「非を探す」のではなく「味方でいる」ことが、何よりも大切です。
温かい言葉は、それだけで誰かの人生を支えることがあります。
社会全体で慎重な言葉遣いや被害者への配慮を心がけるとともに、被害者を追い詰めるのではなく、寄り添えるような社会にシフトしていきたいと願っています。